制約付き量子ビット(Constraint Qubit)

RISC-V量子拡張は, 「RiscV.RV32IU」として @k_yamaz 蛙 が提案しています.
(詳しくは, 技術ブログ Qiita に投稿した RISC-Vの量子計算拡張 をご参照ください. )
思いつきなどをメモしていきます.

量子レジスタを考えるときに, 量子ビットを並べるわけですが, 現在開発されている多くの量子ビットは任意のユニタリ操作が動作するように作られています.
一方で, 量子誤り訂正の理論ではエンコードした複数の量子ビットに対しては, 任意のユニタリ操作を施すというより, 限定的なユニタリ操作しか行えません.
扱えるユニタリ操作は, 誤り訂正の種類によっても様々ですが, 量子誤り訂正を施した後の量子ビットは, 操作できる操作も制限があります.
ユニバーサリティを保つには H, T, CNOT ができる量子ビットが必要で, 最低限でも H, T, CNOT はできるようにすれば, 任意ユニタリ操作ができる一般的な
量子ビットと近似的に同様の計算が行えます.

さてここで, もう少し制約を付与した量子ビットを考えます. 例えば, ユニバーサリティが保てていない制約のある量子ビットを多く配置して,
ユニバーサリティが保てている量子ビットを少しだけ配置した構造で, 量子計算を目指すような構造を検討してみたいと思います.

T ゲート(非クリフォード操作)ができないクリフォード操作しか行えない量子ビットを考えます. 量子ビットの性能は満たさないため, これを「制約付き量子ビット(Constraint Qubit)」と呼びます.

※制約付き量子ビット(Constraint Qubit)の呼称は, ここで提案する呼び方で一般的な用語ではありません.

この制約付き量子ビットとクリフォード操作を組み合わせて一つの量子レジスタを構成します.
ここで検討している構成は次のような制約付き量子ビットを 7個と, 非クリフォードを含んだ結合のための量子ビット 1個の構成です.

●結合量子ビット(Connection-Qubit)

* 初期化: |0>のみ  
* 1量子ビットゲート操作: アダマール演算(H), π/8ゲート(T)のみ可能
* 2量子ビットゲート操作: 隣接する3つの量子ビットとの CNOT (CNOTの方向は制御側1つ、被制御側が2つ)  
* 測定: Z基底の測定、測定結果を古典レジスタ(測定レジスタ)のビットに反映  

●制約付き量子ビット(Constraint-Qubit)

* 初期化: |0>のみ  
* 1量子ビットゲート操作:    X, Z, H, Sゲートのみ可能  
* 2量子ビットゲート操作: 隣接する2つの量子ビットとの CNOT(CNOTの方向は制御側1つ、被制御側が1つ)  
                        (終端の量子ビットは, 隣接の1つの量子ビットと被制御側として CNOT を行える)
* 測定: Z基底の測定、測定結果を古典レジスタ(測定レジスタ)のビットに反映

(※本稿で記載した構成の量子レジスタは, 実装面とかけ離れすぎているという理由もあり, ボツ案となりました. [2019/08/21追記] )